6.金融システムの安定化と機能強化
6.金融システムの安定化と機能強化
今後、行政は市場規律と自己責任を基軸としたルールに基づく行政へと転換していくが、金融機関が抜本的に不良債権処理を図る過程で、経営困難に陥る金融機関が出てくることも予想される。こうした場合においても、預金者保護及び金融システムの安定性確保、更には善意で健全な借り手に対する適切な配慮に万全を期す必要がある。
(1) ブリッジバンク(つなぎ銀行)制度の導入
(ア) 基本的考え方
- 金融機関の破綻に際して、民間の引受金融機関が登場しない場合でも、金融システムの安定と預金者保護を確保し、迅速に金融の危機管理が行える体制を整備して万全を期すこととし、金融システムに対する信頼を一刻も早く回復させる必要がある。
- また、民間の引受金融機関が登場しないために善意かつ健全でありながら新たな取引銀行を見いだせない借り手の対策に資する体制を整備する必要がある。
- このため、破綻後直ちに、その銀行の業務を公的に管理できる制度を整える。さらに、民間の引受け手が登場しない場合でも、善意かつ健全な借り手に融資を維持・継続できる公的な新銀行をブリッジバンクとして設立できる制度を整える。この場合、あくまでこの制度により破綻処理の円滑化を可能とし、金融システムの安定や預金者保護を図ることを最終的な目的とすることが基本であり、この観点から、預金保険機構を活用する。
- なお、厳正な審査機能を有するチェック体制を整備する。
(イ) 具体的な内容
以下によりブリッジバンク(つなぎ銀行)制度を創設する。
- 金融管理人による破綻した金融機関の業務管理
- 金融機関が破綻した場合において、必要があると認めるときは、金融監督庁長官は、直ちに破綻金融機関の業務の執行及び財産の管理をさせるため、金融管理人を選任する。
(注)金融管理人等の適切な人材を確保するための体制を整備する。 - 破綻金融機関の代表権、業務執行権、財産管理・処分権は金融管理人に専属する。また、金融管理人は、破綻に至った経緯等についても実態解明を行う。
- 破綻金融機関は、資産の健全性の確保に努めつつ、善意かつ健全な債務者に対して、金融管理人の承認を受け融資を行う。
- 金融管理人は、破綻金融機関の業務を、できる限り速やかに引受け手としての民間金融機関に継承するよう努め、やむを得ない場合には、公的ブリッジバンクに継承する。
なお、継承が円滑に行われるよう法的な環境整備を進める(特別決議のための株主総会が開催できなかった場合の特例、根抵当権の移管の円滑化等)。 - 公的ブリッジバンクの設立
- 預金保険機構は、「平成金融再生機構(仮称)」(銀行持株会社)を公的資金により設立する。
(注)公的資金としては、金融安定化のために措置された公的資金13兆円の枠組み(金融危機管理勘定)を活用する。 - 平成金融再生機構(仮称)は、金融危機管理審査委員会の議決を経て、上記公的資金により、破綻金融機関の必要な金融機能を継承する公的ブリッジバンクを子会社として設立・組成する。
(注)当該公的ブリッジバンクに対し民間出資も可能とする。 - 金融危機管理審査委員会の下に置かれた審査判定委員会(仮称)は、破綻金融機関から公的ブリッジバンクに継承される善意かつ健全な債務者に対する債権とそれ以外の債権との仕分けを、金融危機管理審査委員会の議決を経た適正な基準に従って行う。
- 預金保険機構は、公的ブリッジバンクの資金調達を補完するため、金融危機管理審査委員会の議決を経て、上記公的資金13兆円の枠組みを活用し、必要に応じ平成金融再生機構(仮称)を通じて公的ブリッジバンクに資金を貸し付けるとともに、その業務により発生した損失を補填する。
- 公的ブリッジバンクは、平成金融再生機構(仮称)に置かれた融資審査委員会(仮称)の承認の下に、破綻金融機関から継承した善意かつ健全な債務者に対し、一定期間、融資を維持・継続する。
- 政府系金融機関は、公的ブリッジバンクの斡旋を受け、公的ブリッジバンクが継承した善意かつ健全な債務者に対し、債務者の個別の事情に応じ、必要な資金を融資する。
(注)10年度において確保されている貸し渋り対策の資金を活用する。 - 公的ブリッジバンクは、あくまでも「つなぎ」・時限的なものであり、破綻金融機関から継承した債権・債務を、破綻時から原則2年以内(ただし、1年ごとに3回までの延長可)に、営業譲渡等により民間金融機関に移管する。
(ウ) また、この制度の整備及び運用に当たっては、必要な透明性の確保に努める。
(エ) この制度を整備するため、所要の法案を次期国会に提出する。
(2) 貸し渋り対策として、政府系金融機関の13兆円の資金の活用政府系金融機関においては、いわゆる「貸し渋り」に対応するため、平成10年度は約13兆円の資金量を確保しているところであり、今後とも、中小企業・中堅企業等の資金需要に十分応えることができるよう積極的に対処していく。
(3) 金融安定化2法で措置された30兆円の活用による金融機関の再編・リストラ
金融機関の再編に当たっては、金融システムの安定と預金者保護への配慮が不可欠である。具体的には、金融安定化2法で措置された17兆円の公的資金が活用されることにより、預金の全額保護の徹底を図りつつ、経営困難に陥った金融機関の適時適切な破綻処理を進めることを通じて、合併・営業譲渡による金融機関の再編を図る。
また、民間金融機関の側においても、自ら金融機関の再編やリストラに果敢に取り組むことが重要である。このため金融危機時における自己資本充実のための13兆円の活用に当たっても、不良債権の適切な償却・引当、売却等やリストラを含む「経営の健全性確保のための計画」の着実な実施が必要である。これらにより金融再編と金融システムの再生が強く期待される。
(4) 破綻金融機関の経営者及び株主の責任の明確化
金融機関の破綻処理に当たっては、経営者の退任及び民事・刑事上の厳格な責任追及や株主の損失負担という原則を貫くものとする。