1.土地・債権流動化と土地の有効利用

1.土地・債権流動化と土地の有効利用

(1)債権債務関係の迅速・円滑な処理

① 臨時不動産関係権利調整委員会(仮称)の創設
 あっせん、調停等当事者の合意に基づく手続を通じて不動産担保付不良債権等に係る債権債務関係等を整理するために、臨時不動産関係権利調整委員会(仮称)を設置することとし、所要の法案を次期国会に提出する。
 法案の骨子は、概ね以下のとおりとする。

  • 委員会の所掌事務は、不動産に設定された担保権、当該不動産の保有者を債務者とする債権債務関係等に関する調整のための、あっせん、調停及び仲裁とする。
  • 委員会は総理府に設置する。
  • 委員会は、委員長及び委員で組織し、内閣総理大臣が任命する。
  • あっせん又は調停の申請は、債務者、担保権者、主要な債権者及びその他の関係者(保証債務者等)が行う。
  • 委員会は申請を受けて、債務者並びにその事業再建のために不可欠と認められる範囲の担保権者、債権者及び利害関係人が手続の当事者として参加することが見込まれる場合に、あっせん又は調停を行う。
  • あっせん等により当事者の合意が得られ、合理的な再建計画が策定される場合における、債権放棄による損失の損金算入及び債務の免除益の累積欠損金との相殺の規定ぶり等について検討する。

② 債権放棄に係る税務上の取扱いの明確化
 合理的な再建計画に基づく債権放棄により発生する損失については、税務上損金の額に算入する旨の一般的取扱いについて、その一層の明確化を図るため、

  • 合理的な再建計画に基づく利益供与の類型としては債権放棄も含まれること
  • 整理や再建の対象となる子会社等の範囲には取引先、役員を派遣している会社及び資金を貸し付けている会社等が含まれること
  • 利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたと認められる計画については、原則として、「合理的な再建計画」として取り扱うこと

等を明らかにする旨の法人税基本通達の改正を行った(6月8日公表)。

③ 適正評価手続(デュー・デリジェンス)の確立
 デュー・デリジェンスを導入するに当たり、担保不動産又はこれらに関する権利の経済的価値を判定し、債務者の資産状況をも考慮した債権の適正な価値を決定するための適切な手続、特に将来収益予想に基づいた収益還元手法を活用するための適切な手法を確立することが求められている。このため、まずは、不良債権の担保となっている不動産の鑑定評価に当たって不動産鑑定士が留意しなければならない事項をとりまとめる。具体的には、社団法人日本不動産鑑定協会と協力し、不良債権の担保不動産の売却を想定して、

  • 担保不動産の収益を前提にした収益価格を算出するための具体的な手法
  • 売り主側の早期売却希望が存在する場合の減価に関する留意事項
  • 対象物件の置かれている制約状況(狭小、接道状況等)に応じて現実の買い主が限定される場合の減価に関する留意事項

等について、検討を進めており、夏頃までに所要のとりまとめを行う。
 なお、共同債権買取機構(CCPC)は、不良債権買取業務を再開するに際して、客観的な適正評価手続により買取価格の決定を行うこととしている。

④ 競売手続の迅速・円滑化
 競売手続の迅速・円滑化を図るため、民事執行法の一部改正等の法整備を行うこととし、そのための法案を議員立法として次期国会に提出する。併せて実務の運用改善のための措置を講ずることとする。具体的内容は、概ね以下のとおりとする。

  • インターネット等を利用して競売物件に関する情報を広く開示し、また、法改正により買受代金支払のための銀行ローンの担保設定を容易にすることで、国民一般の競売市場への参加を促進し、開かれた競売制度を確立する。
  • 滞納処分が先行した場合の調整手続を簡素化するとともに、住宅金融債権管理機構等が作成した調査資料を活用して民事執行手続の一部を省略できるようにするなど、競売手続の簡素化を図るための法改正を行う。
  • 暴力団関係者等による執行妨害に対して厳正な対処をするため、民事執行法上の保全処分を強化し、また、競売物件に関する執行官の調査権限を拡充するための法改正を行う。

⑤ サービサー制度の創設
 債権の管理及び回収を業として行ういわゆるサービサーを、弁護士法の特例として創設することとし、そのための法案を議員立法として次期国会に提出する。サービサー法(仮称)の骨子は、概ね以下のとおりとする。

  • サービサー業につき法務大臣による許可制とする。
  • サービサーの扱える債権は、当面、金融債権、リース・クレジット債権等とする。
  • サービサーは株式会社とし、最低資本金額を設ける。
  • 暴力団の参入を排除するための措置を講ずる。
  • 債権回収の適正を確保するため、サービサーの取締役に弁護士の選任を義務付ける等弁護士の関与を求める。
  • 債権回収に関する行為規制を施し、所要の罰則を設ける。

⑥ 共同債権買取機構(CCPC)の機能拡充等
 共同債権買取機構(CCPC)は、その機能拡充等のため、以下の措置を講ずる。

  • 本年度下半期のできるだけ早い時期に不良債権買取業務を再開することとする。
  • 再開にあたっては、買取り基準を緩和し、競売申立済債権、求償債権等を対象に加え、また、買取り価格の決定は、客観的な適正評価手続(デュー・デリジェンス)のマニュアルに沿って買い切る方式とし、ノンリコースローンファイナンス(債務者の資産全体でなく特定の財産に責任を限定した貸出)を活用することとする。
  • 再開にあたっては、出資金融機関の全面的な協力、連携の下、CCPC債権の証券化・バルクセールへの取組み、住宅・都市整備公団や民間都市開発推進機構との連携などの諸施策を展開する。買取り不良債権を1年程度にて処理することに努め、我が国金融界の不良債権の実質的処理の推進を図る。

⑦ 金融機関の自己競落会社の機能拡充
 金融機関の自己競落会社についても、民間都市開発推進機構をはじめ、関係各方面と連携しつつ、保有する土地の有効利用を推進することが望まれている。このため、担保不動産の自己競落に関し、原則として裁判所が公告した最低売却価額によることとされている要件を撤廃することとし、去る6月8日に、自己競落会社に関する金融機関に対する通達を廃止した。また、同時に、自己競落会社につき土地の有効利用に努めること、流動化の検討に努めること等をガイドラインにより明確化したところである。

⑧ 資産担保証券(ABS)の流通市場の整備
 不動産投資市場の整備の一環として、投資家が株式や債権と比較して投資判断を行う際の指標となる不動産インデックスや、不動産を裏付けとする資産担保証券(ABS)のうち公募のものに係る情報開示(ディスクロージャー)の基準について検討を進めている。
 本検討を踏まえ、先般成立した特定目的会社(SPC)法の9月施行に向けて、同法に基づき発行される資産担保証券について、資産流動化計画及び証券取引法上の情報開示等、所要の措置を講じていくこととする。

(2)土地の整形・集約化と都市再開発の促進

① 都市再開発を強力に進めるための仕組みづくり
 都市再開発事業を迅速化するため、「再開発緊急促進制度要綱(仮称)」を速やかに制定し、緊急かつ重点的に実施すべきものとして建設大臣が認定した事業について、その実施に必要な都市計画の決定・変更、施行の認可等の手続を迅速かつ適切に行うことにより、事業の早期の実現を図る。
 また、都市再開発法の認可手続きを迅速化するよう地方公共団体を指導するとともに、引き続き民間再開発を円滑に進めるための方策について法制面の課題を含め検討する。

② 住宅・都市整備公団の積極活用
 既成市街地の低未利用地を活用し、土地の整形・集約化と再開発、まちづくりを促進するため、住宅・都市整備公団の技術力とノウハウを集中的に活用することとし、公団内に土地有効利用事業推進本部を設置した(6月22日)ところである。また、土地取得のための臨時の出資金(2,000億円)・財政投融資(1,000億円)の適切な活用、特定再開発事業(土地区画整理事業)の面積要件の緩和を行い、官民共同により土地の有効利用を促進する。

③ 民間都市開発推進機構を活用したプロモート体制の構築
 低未利用地における民間再開発事業を推進し、土地の流動化と有効利用を促進するため、共同債権買取機構を始めとした関係機関と連携して、民間都市開発推進機構に時限的に都市開発、金融、行政、法律、会計・税務等の専門家を集めた都市開発プロモート機関(「再開発・土地有効利用支援センター」)を設置した(6月22日)ところである。同センターにおいては、民間再開発の事業化に際して様々な問題に直面している民間事業者等に対し、不動産情報の調査・収集・提供、土地の有効利用のための調査・助言・計画の提案等の業務を積極的に行うこととしている。また、土地取得業務に必要な民間借入金に係る政府保証の枠(平成10年度末までに1兆円)を5,000億円拡大し、同業務の積極的な推進を図る。

(3)公的土地需要の創出
 民間の事業意欲が大きく後退している中で、防災性の高い安全なまちづくりや高齢者・障害者等に優しいまちづくり、中心市街地活性化などによる都市の再生などの事業の実施に必要な公共的用地の取得を積極的に推進するための諸施策を広範に講じる。先般成立した平成10年度補正予算において、公共用地先行取得のため国における事業費3,174億円(国費1,781億円)を計上した(この他、地方公共団体の事業費8,000億円)ところであり、速やかに事業を実施していくこととする。